ブランコを揺らすくさりは僕たちを地上へ繋ぐくさりでもある かっぱ
天まで飛べないふしあわせなしあわせ。
残された時間の中で僕達は何度世界を揺らせるのだろう 松本響
たとえ小さくても、揺らせるものならば。
窓際のパキラが緑の葉を揺らし生きたいと云うしにたい朝に なかた有希
自分にない生命力に励まされたり、嫉妬したり。
揺れたくて揺れている水 ちぢまつて 表面張力たのしんでいる 斉藤そよ
ちゃぷん、と滴たちの笑い声がきこえる。
さみしさになまえはなくて今きみの窓のむこうに揺れている花 飯田篤史
音も鳴く揺れる、きっと一輪。
ベランダで揺れるタオルや靴下といっしょに空に帰りたいです なかはられいこ
ハタハタ揺れて陽に透けるものたちの幸せそうなこと!
ピカソのゑがくをんなの尻の曲線が揺れやまざるなり 青きデッサン 寒竹茄子夫
一本じゃないラインが振動しているように見えて。
ちょっとだけ楽しそうだね 動揺をして騒ぎだすときのあなたは しょうがきえりこ
だって楽しまなきゃ、それも人生のうちだもの。
肋骨のなか守られているものの全てを揺らして子はバッハ弾く フワコ
小さないのちの全身全霊。
澄み渡る青い月夜のすすき野の 揺れていようと諦めがつく けこ
綺麗に揺れる様を見たら、それはそれでいいじゃないかって思ったんだ。
死んだ蚊を包むティッシュの白ささえ揺らす私の息を許して 徳田ゆきこ
生きている自分が奪ったいのちへの罪悪感。